水文確率値をとる対象期間幅による確率分布の
適合性および安定性について

Necessary Time Span for Stability and Conformity of Hydrological Probability Model Calculation
許士達広・加藤正純
Tatsuhiro KYOSHI and Masazumi KATO
北海学園大学工学部土木工学科教授
札幌市役所
要旨

 貯水池容量配分などのため、降雨等の水文量の確率値を年間の各時点で求めて時点による変化を見ようとする場合、確率計算を実施するためには、その時点と同様の水文現象が起こりうる母集団として、前後何日間という期間を設定する必要がある。これはその現象の気象的原因の特性(台風や梅雨)といったものに起因させて決定することが考えられるが、一方母集団としての確率分布の安定性や、確率分布の適合性の見地から、期間には一定以上の望ましい日数幅が存在すると考えられる。本研究では確率値を取る期間幅を10日~240日まで変化させ、7種類の確率分布モデルを使用して、確率をとる期間幅による安定性と適合性の比較を行った。確率分布の安定性の指標としてはJackknifeやBootstrapといったリサンプリング法による分散を確率値で除したものを用い、確率値の適合性についてはSLSCやAIC(赤池情報基準)を使用した。結果として確率をとる期間幅の増加により、リサンプリング法によるばらつきの減少傾向は明瞭なものが得られたが、SLSCと日数幅の関係には必ずしも一定の傾向が見られなかった。また確率モデルごとに安定性と適合度を比較すると、リサンプリング法による安定性の高いモデルと、SLSCなどの適合度の高いモデルが異なるという結果になった。

《キーワード: 水文量確率値; 確率をとる期間幅; Jackknife法; Bootstrap法; SLSC; AIC》