水路の分岐現象について

On the channel bifurcation
泉 典洋
_東北大学大学院工学研究科(__ 仙台市青葉区荒巻字青葉__)
要旨

下流端に段差を有する斜面では,斜面上に生じた表面流は段差近傍で加速され剪断力が大きくなるため斜面下流端において活発な表面侵食が生じる.この際,当初平坦であった斜面上は横断方向の擾乱に対して不安定となり,横断方向にほぼ一様な間隔を持った水路群が形成される.このようにして斜面下流端に形成された初期水路群の水路頭部では周辺の流れが集まるため更に活発な侵食が生じ,水路は上流側へと発達していく.上流側へ発達する際,水路頭部は時折二つあるいはそれ以上の水路へ分岐することがある.このような分岐を幾度となく繰り返すことによって,最初単純だった水路群は複雑な水路網へと変化していく.本研究は,このような分岐が生じる原因が水路頭部周辺に生じる_ 次不安定現象であるとの観点から,水路頭部前縁部に円周方向の擾乱を与えることによって分岐の物理機構を理論的に説明したものである.解析の結果から,限界水深_抵抗係数 と水路頭部半径 の比 が0.1-0.2程度の値より小さくなると,水路頭部は擾乱に対して不安定となり,分岐が生じ始めることが明らかとなった.水路が上流側に発達するにつれて流量が減少したり,上流側で底面摩擦係数が大きくなって が小さくなると,水路頭部は分岐するものと考えられる.

《Key Words》channellization, gully, channel head, channel bifurcation, linear stability analysis