ダム治水容量の時点別決定法に関する研究

A Statistical Approach for Seasonal Determinations
of Flood Control Capacity at Reservoirs.
許士 達広1・柴田 佳和2・小倉 勉3
Tatsuhiro Kyoshi,Yoshikazu Shibata and Tutomu Ogura
1 北海学園大学工学部土木工学科教授
2 北海学園大学工学部土木工学科
3 (財)日本気象協会調査部情報開発課技師
要旨
水資源開発には長期の時間と多大なコストがかかり、近年は環境問題等によりその困難性が増しているため、新規の水需要が生じた場合の対応が難しくなっている。一方既設のダムでは、完成後何十年か経過するなかで計画時点では想定されなかった水文事象が生じたり、環境のための新規用水補給が必要になったりしている。このため既存のダムの限られた貯水池空間をいかに有効に使うかが、今後に向けての重要な課題となる。
 現在のダムの洪水調節容量は、既往降雨デ-タから各年のある期間内(期間幅)に生じた3日間雨量や一雨雨量等の最大値を抽出し、確率値をとって計画降雨を設定したうえで流出解析および計画の放流操作を行って定めている。その洪水調節容量をとる期間幅は降雨の多い期間(通常7~9月)を洪水期として設定するか、オールサーチャージ方式として通年(1~12月)を設定するものが多い。また2期洪水期として洪水期以外に6月や10月の短い期間に生じた既往の3日間雨量等から、その期間の確率値を設定することもある。
  貯水池の有効利用に向けて、必要な治水容量を時間的に細かく変化させて算出してみると、洪水期の中でも利水に振り向ける可能性のある時期や、さらに安全度を確保すべきである時期が明らかになる。それには各時点で前後の確率をとる期間幅を適正に設定して、その期間内に生じた3日間雨量等について確率計算を行い、容量を定めることが必要である。このための検討は従前より殆んど行われておらず、本研究において天気図を用いた気象学的アプローチにより、確率をとる期間幅を適正に設定する方法を検討し、今後のダム運用における弾力的管理などの効率化や再開発に向けて、治水利水の安全度向上に有効かつ実用的な手法の開発を図るものである。
《Key Word: ダム、 治水容量、 降雨期別確率値、 天気図、 低気圧》