苫小牧地域の河川流域の流出特性に関する研究

A Study on Runoff Characteristics in Rivers of Tomakomai Area
八田 茂実
Shigemi HATTA
苫小牧工業高等専門学校環境都市工学科助教授
要旨
これまで、苫小牧地域の河川を対象とした研究では、地形上の流域界を超えた水分移動が指摘されている。しかし、これらの検討の多くは、観測網が十分に整備されていない時代に行われたため,比較的雨量の少ない海岸部の降水量のみを用いており,流域雨量を過小評価している可能性がある。また,河川流量の観測箇所・頻度が少ないため,地域全体を包括した形で水収支を検討するまでにはいたっていない。
本研究では、樽前山南側に位置する苫小牧西部地区の7つの河川流域を対象として、水収支を検討した。まず、レーダーアメダス解析雨量と地上雨量計の観測結果および積雪調査の結果を用いて流域平均雨量を推定し、次に各流域の地形分布を考慮して流域蒸発散量を熱収支法に基づいて推定した。この結果、対象とした地域全体では、全降水量と全流出高の残差が流域蒸発散量よりも小さく、水収支が閉じていない可能性があることが示された。このことは、この地域の水循環を考えるには、支笏湖を流域に含めた広範囲の解析が必要であることを示唆している。
《キーワード: 流出特性; 第四紀火山; 水収支; 低水流量》