治水技術者の技術交流史の研究

A Historical Assessment for Technical Exchanges of River Engineers in Hokkaido
大谷 直郎,山口 甲,村端 克己
Tadao OHTANI, Hajime YAMAGUCHI and Katsumi MURAHASHI
水交会会員
要旨

治水技術または実際に治水事業に携わった治水技術者とは近代工学の分類でいうアカデミックな理論工学の概念のみで表わせない技術である.その技術とは自然現象に対峙して生まれた理論工学であると同時に地域性に富んだ地域の風土,文化,行動と緊密に連携している技術でありそれを修得している者が治水技術者である.
東洋思想に水は万物の本源にして諸々を生み出す根源であって,聖人の世を作るはこれ水による(管子)とあり,所詮は水を治めることが国土造り,風土造り,人造り,社会造りの根本という思想である.我が国でも治水思想という言葉はあっても他の工学分野にはこの様な言葉は見当らない.
また日本人には,暴風や洪水が人間を脅かすという風土が忍従的,突発的などの性格を植えつけている(風土)と述べられており,我が国の中でも亜寒帯に位置する北海道地域の風土または水を治める治水思想は他の地域とは異っているものと思慮される.
そこで北海道地域における水を治める広義の治水技術について論及するにあたり水を治めるテクニックはさておき,治水事業を行動規範としてきた治水技術者達の技術交流の行動実態を通じて北海道地域における治水思想の流れを究明してみる.その治水思想を分析するに臨んで治水技術者で構成されている技術者集団水交会に着目し,先づ本文は水交会の技術交流を分析したものである.

<<Key Words:北海道の治水技術,治水技術者,水交会活動史>>