水理・水文モデルの比較・評価に関する研究

The Study on Comparative Estimation of Hydraulic and Hydrologic Models
早川 博
Hiroshi HAYAKAWA
北見工業大学工学部土木開発工学科助教授
要旨

近年,国民の環境に対する関心の高まりや地域の実情に応じた河川整備の必要性等を踏まえ,治水・利水に加えて環境の整備と保全を目的とした河川法が平成9年に成立した.これにより,新たに,地域住民の意見を反映した河川整備計画が導入された.このように,河川流域の地形特性や地域の風土・文化などの実情に応じた河川整備を推進していくためには,地域住民に対する分かり易い説明や情報提供が必要不可欠となる.
欧米の河川実務者レベルでは,流出,河道追跡,下水道などの解析対象に応じて標準化された解析モデルを用いるのが現状である.本邦においては,従来から河川流域毎に,あるいは所轄省庁によって多種多様の解析モデルが使われてきた.河川法が改正され地域住民との対話が不可欠な現在,河川計画の立案においても標準的な解析モデルが望まれている.本研究はその手始めとして欧米での標準的モデルを本邦の諸河川に適用可能かについて,その諸問題を検討するものである.
欧米の大陸河川・流域を対象として構築された解析モデルを,流域が急峻で非線形性の強い降雨-流出現象が表れる本邦の諸河川に適用するには種々の問題点が考えられる.本研究では米国のHECモデルと英国のTOPMODELを取り上げ,比較的欧米の大陸河川に近い北海道内の主要河川に適用し,短期流出,長期流出への適用の可能性について検討した.加えて本邦で代表的な流出モデルである星らが提案した一般化貯留関数法との比較も行った.
HECモデルは単位図法を基本モデルとしているが,北海道内の主要河川に適用した結果,良好な結果が得られた.また,TOPMODELは地中流が卓越する流域に効果的な流出モデルであり,長・短期流出解析に適用可能である.

<<Key Words:流出モデル,HEC,TOPMODEL,一般化貯留関数法>>