北海道における流出予測モデルの構築と総合化

貯留関数法に損失機構を有する流出モデルが田中・藤田ら1)や八田ら2）によって開発され，その物理的意味3）やモデルの取り扱いやすさは既に実証されている．著者と星4),5)は，この流出モデルの考え方を踏襲して表面流出，中間あるいは地下水流出成分に対応するモデルとして直列二段型貯留関数モデルを構築し改良を重ねてきた．単独流域における流出モデルとしての性能や取り扱いやすさは従来のモデルと比較してなんら劣るところはなく，むしろ実測値に対する計算精度は向上した結果を得ている．現在のモデルでもまだ改善の余地はあると思うが，現在に至るまでのモデル開発の経過を述べておくことは決して意味のないことだと思われないので最初に構築経過を述べる．本研究における最終目的は流出予測モデルの構築であり，カルマンフィルター理論などの予測理論とカップリングを行う場合，未知パラメーターの数が収束性に大きな影響を与える．従って，未知パラメーターを物理的な意味から固定値として扱う工夫も行った．また，これらのモデルを，道内を網羅する13水系において観測された観測値に適用しその有効性を検証した．

<<Key Words:貯留関数法，損失機構，流出解析，総合化>>