流域・河道系洪水追跡のための貯留関数法の開発

Development of Storage Routing Models in the Basin-channel System
星   清
Kiyoshi HOSHI
(財)北海道河川防災研究センター研究所長
要旨

本報告では、流域における流出解析と河道における洪水追跡を同時に行うことができる新しい貯留関数法を提案している。新しく開発された貯留関数モデルはKinematic waveモデルを集中化したものであり、両モデルの定数間の関係が定量化されている。このため、流出・河道追跡計算を迅速に行うことができる。
本報告での解析手法の特徴を以下に述べる。

(1) 解析対象流域が個の分割流域と個の分割河道から成り立つものとする。
(2) 個の分割流域における流出解析に貯留関数モデルを適用する際に、3個の未知定数は個の分割流域に共通で、しかも一定値をとるものと仮定する。
(3) 個の分割河道における洪水追跡に貯留関数モデルを適用して、流量観測基準点毎に、流出モデルに含まれる3個の未知定数はニュートン法により自動最適化される。
(4) ニュートン法に必要な感度係数は解析的に算出される。
(5) 実測雨量と実測流量を直接用いる損失を考慮した貯留関数法を流出解析に適用している。
(6) 河道追跡に必要な6個の貯留関数モデル定数は既知である。
提案モデルを石狩川の支川、雨竜川流域の流量観測基準点である多度志と雨竜橋の昭和63年8月洪水例を適用して、ハイドログラフの再現性を検討した。また、後志利別川流域の今金地点における平成10年5月洪水に適用して、美利河ダムの洪水調節効果の評価を行った。

≪キーワード:Kinematic wave法; 貯留関数法; 流出解析; 河道追跡; ニュートン法; 感度係数≫