忠別川における優占的な河畔林の
成立初期過程の解明

Establishment process of dominant trees in the riparian forests in the
Chubetsu river
石川幸男
Yukio ISHIKAWA
専修大学北海道短期大学造園林学科教授
要旨

石狩川支流、忠別川中流部の河畔林において、優占的な種の分布実態、 林分構造と樹齢構成を調査すると共に、 定着基質である堆積砂礫の粒径組成や河畔林の比高との関係を解析した。清流橋下流の大岩から中忠別までの間で4ヵ所の調査地を設け、合計 40 のプロットにおいて調査を行った。優占的な河畔林構成種はオオバヤナギ、ドロノキ、エゾヤナギ、およびオノエヤナギの4種であった。自然河川の状態が保たれている忠別ダムより上流の地区では、多様な樹齢、構造の河畔林が成立していたが、ダムより下流の地区では林齢は最大でも 18 年であり、若齢で単純な河畔林構成であった。
 
 オオバヤナギ、ドロノキ、およびエゾヤナギの3種がそれぞれ優占する林分の定着基質の平均粒径には有意な違いはなかったが、オノエヤナギ優占林分の平均粒径は、前 3 種の優占林分より有意に小さかった。 それぞれの種の林分が優占する河床からの比高は、ドロノキが最も高く、オオバヤナギがそれに続き、エゾヤナギとオノエヤナギが最も河床に近かった。 しかし、これらはいずれも大きく重複していた。 寿命の長いドロノキやオオバヤナギの発達した林分は、例外なく、比高の高い部分に成立していた。
 
 実際に過半林を造成する場合には一林分単位で行われることから、 定着初期には複数の種を定着する方針をとり、 その後に林分が発達する過程は、 河川の環境に由来する淘汰にゆだねた方法を採ることを提唱した。

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