石狩川における河畔林の分布、構造と生育立地

Distribution,structure,and habitat of riparian forests in the Ishikari river
石川幸男
Yukio ISHIKAWA
専修大学北海道短期大学造園林学科教授
要旨

石狩川において河畔林の分布を調査した。合計35カ所の調査地点において優占種となった種は、ヤナギ科7種(オオバヤナギ、ドロノキ、オノエヤナギ、エゾヤナギ、エゾノキヌヤナギ、エゾノカワヤナギ、タチヤナギ)以外に、ハンノキ、ハルニレ、およびケヤマハンノキであった。これらの種の各個体のサイズをロシア沿海地方の原始河川でのサイズと比較した結果、石狩川における現在の河畔林はいずれも未発達であることが確認された。ヤナギ科の樹木はおおむね河川の水面からの比高が小さい部分に成立していたが、ヤナギ科以外の種の場合には、比高の高い部分にも成立している個体もあった。下流から上流に向かってマクロなスケールで見た場合、粒径組成の変化に対応して生育する種も変化した。すなわち、下流において微砂と粘土が卓越する場合にはタチヤナギとハンノキ、中流で粗砂や細砂が卓越する部分にはエゾヤナギとハルニレ、上流で礫の卓越する部分にはオオバヤナギが優占していた。またドロノキとケヤマハンノキは細砂から礫まで、オノグルミとヤチダモは粗砂から粘土まで、成立範囲が広かった。しかしより細かいスケールで見た場合、地形その他の要因によって粒径組成は局所的に変化する場合があり、それに対応して生育する種も変化していた。

中流以下のヤナギ属が主体となる調査プロットでの最大個体の樹齢は、多くの場合に15年から18年の範囲に収まり、1981年の増水をきっかけとして成立した林分と考えられた。一方ハンノキ、ハルニレ、オオバヤナギやドロノキが優占する林分は、それ以前に成立していた。

以上の結果を基に、河口からの距離に相関のある基質の粒径組成と成立後の安定性の2軸上における、主要種の位置を推定した。また、今後に必要な調査項目を指摘した。

《キーワード:撹乱;土性;比高;安定性:ロシア沿海地方;》